今日もメルヴィルと一緒に通学している。
空を見上げると空の青さは9割以上で雲がちらほらあるくらいだ。
「アルス、眼鏡外したのか?」
「この体になって視力が戻ったのでのぅ、それに眼鏡のサイズが合わなくて外すことにしたのじゃ」
小さくなったことで不便になったことはあったが、反対に良かったこともいくつかあった。
視力が回復したのがその一つだ。
あとは、小さなスペースでも寝られること、メルヴィルにおんぶしてもらえること、食費が抑えられること、肩こりが改善したことくらいだ。
「眼鏡かけてた方が、なんかアルスぽかったのになー」
「掛ける面倒なのでのぅ、この体が与えてくれた利点なのじゃ!」
「ネガネっ子属性がなくなって悲しいなー」
と会話をしながら、通学路を歩いていた。
***
いつもの学園に着く。
だが、今日はなんか学園中が騒がしい。
玄関口はやや人が多く、さらに先は人であふれている。
どうやら中庭で何かが起きているらしい。
「何が起きているんだ?」
「興味深いのぅ、行ってみるのじゃ!」
奥に進むが、人であふれかえっている。それはまさに人が作り出した壁の様だ。
最前列で起きていることが確認できないため、メルヴィルに肩車をお願いした。
そして、この体の利点がまた一つ見つけてしまった…。
「どうだ?見えるか~?」
「ホウキのようなものが見えるのじゃ」
「おぉ!?ホウキとな!」
何かホウキの形の乗り物ようなものが5台ほどサイコロの5の目の様な配置で展示してあるのが見えた。
各ホウキの周りには生徒たちが触れられないようにガイドポールで囲まれている。
昔、小さかったころ母親に読んでもらった本で、とんがり帽子をかぶった魔女がホウキに乗って旅をする絵本を思い出した。
ホウキに乗れたらと夢を見ていたが、それは夢物語に近かった。
飛行魔法はだいぶ前から確立はしていたが、浮かばせることができるのは、せいぜい人間が片手で持てる程度の重さ。
このまえに、橋で遊んでいた子供が落とした人形を浮かせたように、身軽なものは私以外でも誰でもできる。
だが、質量が大きくなるにつれ浮かばせることは難しくなり、人ほどになると浮かせて空を飛ぶことは不可能だった。
しかし、ここ最近、人を浮かばせる飛行魔法ができたらしい。
「そういえば学会誌に載っていたなー」
「見てないのじゃ!」
「魔法の歴史の中で革命的なレベルだし、見てたと思ったのにアルス遅れてるなー」
メルヴィルの話によると月刊魔法学会誌『メビウス』で特集してたのこと。
私は毎月図書館で読んでいるが、今月号のは呼んでいない。
新号発刊の頃はリリィを戻るための材料を集めていたため、その情報を知ることはできなかった。
「結構、学校中では噂になってたけど、気づかなかったかな?」
「リリィのことで頭がいっぱいで気づかなかったのじゃ!」
「そうだったな…あと本を読んでたのも原因じゃないのかな?」
「…ごもっともじゃ」
っと流行に遅れていることに気付かされた私がいた。
横から先生3人とこのホウキの開発者らしき外部の2人が出てきて、生徒の群れの前に立ち止まった。
先生の一人は私のクラスの担任で、一歩前に出ると話し出した。
「おほん、近日、人を浮かばせる魔法『中型飛行魔法』が確立したことを皆知っておるな?まさか知らない者はいないじゃろう」
「ぎくりっ…」
「今日は、この飛行魔法に携わったシューマン先生と魔法学院のガイガー教授、そして、その魔法を駆使して作られた飛行箒《フェザーロッド》の開発者がおいでじゃ。」
なんとなく検討はついているが、どうやらフェザーロッドという機械のお披露目ということだろう。