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第5話『橋の上の子ども』【魔法に失敗して10歳若返りました☆】

第4話『アルス、憂鬱、食堂にて。』【魔法に失敗して10歳若返りました☆】目次はこちら https://kokutendo.com/i-failed-my-magic-and-turned-10-year...

地獄と化した学園生活の一日目が終わった。

放課後はクラブ活動がある生徒は学園に残って活動するのだが、私はどこのクラブにも入っていない。

つまり帰宅部ということだ。

帰宅部である私は荷物をまとめ我が家に帰る準備をして、学園の校門を出る。

誰かの存在を忘れているような感じがしたが、家までの帰路を本を読みながら歩む。

少し歩いていくと、いつも通学路で通る橋に差し掛かった。

この橋はアーチ構造でほとんどがレンガでつくられている。

漁船が2隻同時に通過できるくらいのアーチが5つあり、それらが路上を支え通行者を向こう側まで渡している。

私の家はこの橋を渡った先の山の麓だ。

ときどき突風が吹く橋だが、今日も構わずこの橋を歩いていく。

川沿いには小さな飲食店やカフェ、自家製のパンを売るベーカリー、肉や魚などを販売している小売店、書店、魔法道具店などの店が立ち並んでいる。

小さな繁華街と言ってもいいだろう。日が沈み始めているため街並みの輪郭は薄暗く染まっていく。

中には明かりをつけている店も少なくない。

川の先には海への河口があり、そこから海をまたいで陸繋島が右側に見え、先端に灯台が一つ建っている。さらに暗くなれば、灯台は明かりを灯すだろう。

ちょうど橋の半分を渡り終えようとしていた時、向かい側から突風が吹き荒れた。

その強さの勢いで砂や落ち葉などが飛んできたため、慌てて持っていた本で自分の顔を覆いガードした。

突風がおさまり一度本を下すと、橋の先に1人の子供が何かをして遊んでいるのが見受けられた。

近くまで歩いてみると今の私より小さい男の子がライオンの人形を橋の格子の上に乗せて遊んでいた。

また、突風が吹きあがった。

「ポチャン」

耳元に響く風の音の中、何かが川に落ちるような音が聞こえた。

「あー、僕のライオ2世が!」

どうやら、男の子が遊びに使っていた人形を川に落としてしまったようだ。

私はすぐさま川を見下ろし人形の位置を確認する。

そして自分の手を人形に向けて伸ばし、自分の口元だけに響くように呪文を唱えた。

川の底に沈みかけている人形を宙に浮かせ、私の左手の手元に人形を移動させた。

私は自主的にやっている魔法の研究以外では、魔法を使わないようにしているが、男の子が可愛そうだったので、今回は魔法を使うことにした。

この体になってから初めて魔法を使ったが、魔法は普通に使えるようだ。

手元にある人形を男の子に渡した。

「ありがとう!小さいのに魔法使えるの!すごい!!」

お礼を言われたと同時に、自分は小さくなっていることを実感した。

私のことを知らない人はただの子供にしか見えないからだ。

男の子はだいたい私と同じくらいの背丈で、私の方が少し高いくらいかもしれない。

肉体的には同じくらいの歳だろう。

「うおぉおぉおぉおおぉお」

聞き覚えのある声が私の後ろから聞こえてきた。

「毎度のこと俺を忘れていきやがって」

言うまでもなくメルヴィルだ。

「この人、お兄ちゃん?」

「違うのじゃ!」

他人から見れば年が離れた兄妹しにしか見えないのだろう。

彼と合流したとき、夕日は残り精一杯の光を放っており、3人の影をレンガ作りの橋の歩道に映し出す。

「本当にありがとう!」

男の子はもう一度お礼を言った。

辺りが暗くなり始めたので、軽く手を振って男の子と別れた。

今日は疲れたので、途中までメルヴィルにおんぶしてもらって帰ることにした。

彼の背中が広くて居心地のいいものと感じた夕方だった。

第6話『メルヴィルの家』【魔法に失敗して10歳若返りました☆】目次はこちら https://kokutendo.com/i-failed-my-magic-and-turned-10-year...
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