印刷用のPDFを作成する際には、データの不具合を防ぐためにいくつかの重要な手順を踏む必要があります。以下に、PDFの適切な書き出し方法について説明します。
1. Illustratorファイルをコピーし、リネームする
編集を加える前に、元のIllustratorファイルをコピーし、リネームしておくことで、万が一のミスを防ぐことができます。
特にアウトライン化したデータと区別するため、ファイル名の末尾に「_ol」を付けて管理すると便利です。
2. ブラシ効果などの特殊効果は拡張する
Illustratorでブラシやぼかし、光彩などの特殊効果を使用している場合、PDFに書き出した際に正常に表示されないことがあります。
さらに、プリント時にエラーが発生し、PDFが落ちることもあります。
そのため、特殊効果を使用したオブジェクトは、必ず拡張し、ベクター化またはラスタライズしておくことを推奨します。
3. 半透明を使っている部分はラスタライズする
透明度を使用しているオブジェクトは、プリント時に意図しない出力になる可能性があります。
そのため、透明効果を使用している部分はラスタライズし、不具合を防ぎましょう。
ラスタライズする際は、解像度を 300dpi以上 に設定すると、印刷品質が確保されます。
4. すべての文字をアウトライン化する
フォントが正しく表示されないトラブルを避けるため、すべての文字をアウトライン化する必要があります。手順としては、以下の通りです。
- すべてのレイヤーのロックを解除する
- すべてのテキストを選択する
- 「文字」メニューから「アウトラインを作成」を選択する
アウトライン化することで、フォント情報が不要になり、環境に依存しないデータとなります。
5. トンボを指定する
印刷物を正確にカットするために、トンボ(トリムマーク)を付ける必要があります。
Illustratorの「トンボと裁ち落とし」設定でトンボを追加し、太さを 0.25pt に設定してください。
トンボの線が太すぎると、印刷物のデザインに影響を与えたり、仕上がりにトンボの線が残るリスクがあります。
一方、細すぎると印刷時に見えにくくなり、裁断時の精度が低下する可能性があります。
6. レジストレーションマークを有効にする
レジストレーションマーク(トンボとともに付ける印刷用のマーク)も有効にしておきます。
これにより、印刷時のカラー調整や位置合わせがスムーズに行えます。
7. 裁ち落としの指定
Illustratorの「ドキュメント設定」で、天地左右3mm の裁ち落としを設定することで、断裁時のミスを防ぎます。
裁ち落とし(塗り足し)は、仕上がりサイズより外側に余分なデータを持たせることで、断裁時のズレを防ぐ役割があります。
8. PDFを「X-4 2008」で書き出す
PDFの書き出し設定では、「PDF/X-4:2008」を選択しましょう。
PDF/X-4:2008は、透明効果やレイヤー情報を保持しつつ、高品質な印刷に適したフォーマットです。
カラープロファイルの管理が可能で、印刷工程での誤差を最小限に抑えられるため、入稿時の推奨設定とされています。
まとめ
入稿用のPDFを作成する際には、以下のポイントをしっかり押さえましょう。
- 元のIllustratorファイルをコピーし、リネームする
- 特殊効果を拡張またはラスタライズする
- 半透明部分をラスタライズする
- すべての文字をアウトライン化する
- トンボ(0.25pt)を指定する
- レジストレーションマークを有効にする
- 裁ち落とし(天地左右3mm)を設定する
- PDF/X-4:2008 形式で書き出す
これらの手順を踏むことで、トラブルなくスムーズに印刷入稿が可能になります。